「それでも私は山に登る」田部井淳子著 文藝春秋 2013年

以前に読んだ本だが、作者が先日亡くなられたのでもう一度図書館から借りてきた読んだ。

作者は日本の女流登山家の先駆者である。登山家と言えば「孤高の人」というイメージが強いが、普通の主婦であり、母であった。ただ、山に魅せられて登り続けてこられた女性なのだ。日本国内のみならず、海外のそうそうたる山々へのアタックにも挑戦されてきた。そして、しばしば、女性だけの登山隊で。

しかし、女性だけの登山隊といっても、聖人君子ではない。山という過酷な環境下では揉め事、ゴタゴタなど普通の日常生活以上にいろいろあったことも書かれている。地上では体力があっても、いざ頂上へ登頂という際には、ベストメンバーで臨まなければ命の保証がない。また、時には登頂をあきらめなければならないときもある。その際に出る隊員からの不平・不満、あるいは中傷にも動じずに芯がぶれることなく決断をしなくてはならない。私なんかだとお手上げあるいは切れてしまいそうな状況でも、作者は何度も失敗を繰り返しながら、山に登り続けてきた。「それでも私は山に登る」というのは、山にはそれほどの苦労をはるかにしのぐほどの魅力があるということだろうか。

作者は乳がんを2007年に、そして2012年に腹膜がんにかかる。特に腹膜がんは一時は余命数か月宣告を受けられたぐらいの悪い状況だった。しかし、抗がん剤治療を受けながらも、山に登ることを止めなかった。足があがらなくても、とにかく家よりも山にいくことを望んだ。東北震災後は、東北の復興のためにボランティアでイベントを企画し、東北の子供たちを富士山登山に招待したりもされていた。

結局、腹膜がん発覚から5年たたずして亡くなられたわけだが、「5年生存率3割」という宣告にも負けずにみごとに生き切られたということだ。

ご冥福を心よりお祈りしたい。

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by redsunflower | 2016-11-06 12:15 | 読書録 | Trackback | Comments(0)

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