「硫黄島の兵隊」越村敏雄・吉川清美著 朝日出版社

私がまだ20代前半だったころ、仕事で行ったワシントンDCに「Iwojima memorial]と書かれたモニュメントがあった。当時の私は硫黄島については第二次世界大戦で激戦地であったことはかすかに知っていたが、詳細は何も知らなかった。

この夏、TVでクリント・イーストウッド制作「父親たちの星条旗」という映画を見た。硫黄島の激戦だけではなく、なぜ、あのモニュメントが建てられたのか、このモニュメントのモチーフとなった写真の兵士たちの運命をアメリカ側の視点で描いた秀逸な映画だった。(映画の批評YOUTUBEの予告篇 はクリックしてください)特に、予告編の後編で「戦争とは・・」と語る帰還兵の言葉には重みを感じる。どこかの国の政治家にも是非見ていただきたい映画だ。

この映画を見て、硫黄島についての本を図書館で借りてきたのが、今日紹介する本。
作者は硫黄島からの数少ない帰還兵のひとりとその遺志を継いだ娘さんである。生還したのは、重病のために戦闘直前に日本に送還されたから。日本軍の戦死者19900人、生存者1033人。アメリカ軍は戦死者6821人、負傷者21865人。いかに激しい戦いであったかわかる。

しかし、この本は、硫黄島の戦闘が始まる前にすでに日本軍が事実上、負けていたことを描いている。
硫黄島には、水もなく兵士は絶望的な喉の渇きを常に抱えていた。加えて、水のないところには草木は生えず、食料補給もなかった。栄養失調でフラフラになりながら、戦闘に臨まなければならなかった兵士たち。輸血を準備して、衛生兵(医療従事専門の兵士)を前線に配置していたアメリカ軍との違いは大きい。「日本では戦死となるところを、次々と戦傷の範囲に引きとどめる努力をした…」と作者は記している。

硫黄島は現在日本の領土である。しかし、まだ一万体近い遺骨が収集されていない。アメリカ軍は戦後10年内にすべて兵士の遺骨を収集したというのに。

「戦争を知らないで、一生を終えられたら、これほど幸せなことはありません」と越村氏の言葉は本当に重い。



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by redsunflower | 2015-08-23 11:04 | 読書録 | Trackback | Comments(0)

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