「ひとりの午後に」 上野千鶴子 NHK出版 2010年

最近私の読書録によく登場する上野千鶴子氏。

私は、気になった作者は「ダ、ダ、ダ」と一気に読むタイプなのである。

「考えたことは売っても、感じたことは売らない」主義だった作者のエッセイ集、とでもいうのだろうか。

その昔、遥洋子の本に「一流の学者でありながら、子どものように感情の豊かなヒト」と作者を描写してあったが、その表現が間違いなかったことをこの本は教えてくれる。

考えれば、学問とはいえ、作者は結構、厳しい生き方をしているように思う。日本という国は、主流の真ん中にいるほうが、たとえ学者だって、楽にはちがいない。時には、作者の講演会拒否に際して、訴訟をするなどして対権力の戦いも辞さない人、という強いイメージが先行していたが、この本を読んでいると、強がって、傷つきやすい面をもちつつ、それを知性で乗り越えようと生きてきた人だと良くわかる。研究室を訪れる学生へのアドバイスも絶妙だ。BIGなれば、学生への指導がいい加減になる研究者もいるが、そういうタイプではない。

ベストセラー「おひとりさまの午後」に対しては、恵まれている作者だからこそ言える「高みからのアドバイス」という批判もあったが、そのアドバイスが両親を失った後の自らの孤独との向き合いから生まれたものだとこの本でわかる。

あとがきで、この本が優秀な編集者からの働きかけで生まれたことが明かされている。作者書き下ろしのエッセーを提案(上野氏の、これまでのエッセーをまとめたものではどうか、という提案をバッサリ切り捨てたそうな)締め切りがないと原稿が進まない作者のために、「おしゃれ工房」というテキストでの連載をとってきたという編集者。一流の編集者には作者を「この人のために仕事しよう(書こう)」と思わせる、と益田ミリの本にもあったが、そんな編集者がいらしたことにも感謝したい。

上野氏のエッセイの文章も素晴らしい。かなり文学にも造詣が深い気がした。ドライなあっさりした日本語が多い社会科学系の本を読むことが多い私は、見習いたいけど、一生かかっても無理なような気がする。
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by redsunflower | 2014-11-05 08:41 | 読書録 | Trackback | Comments(0)

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