『おわらない音楽』小澤征爾著 日本経済新聞社

有名な日経のコラム「私の履歴書」に掲載されたものを加筆修正したもの。このコラムは社会的に成功した人が必ずしも順調といえない時期を経験し、それを乗り越えて成功にたどりついたお話が紹介されるので、励まされることが多い。

著者は世界的な指揮者。若くして、国際指揮コンクールで優勝した経緯は、『ボクの音楽武者修行』に詳しいが、本書はその後どのように指揮者として成長していったか、プライベートも交えてのお話である。

国際コンクールに優勝しても、それだけで常に立派な指揮ができ、楽団員から尊敬されるとは限らない。1962年にN響の指揮者になったが、なんとボイコットされてしまう。著者も本で認めているが、経験が少なさすぎ、オーケストラには気の毒だった(指揮者)だったのが、原因らしい。しかし、当時の著者はこのことでかなり傷つき、「日本には戻らない」決意をする。この時父親が言った言葉「人殺しと盗みをしない限り、おまえは俺の息子だ。それ以外のことだったら何でもやれ。最後は俺が骨を拾ってやる」が忘れられないというくらい、著者の心は苦悶していたのだろう。

しかし、この経験はのちに海外で指揮をするときに生かされる。「2度目の機会はない」と常に最高の指揮をめざし、また指揮だけではなくオーケストラのアドミニストレーターとして楽団員とコミュニケーションをとることも重ね、経験を増やすために当時はあまり有名でないオーケストラの指揮者になったりした。そして、今の彼がある。

また、立派なコンサートホールだけでなく、日本の田舎のお寺などで田んぼで作業していた人がそのまま音楽を聴けるような活動も続けてこられたらしい。

海外で長い間活躍されていたので、てっきり家族も海外在住と思っていたが、子供には日本の教育を受けさせたいということで、単身赴任されていたということも初耳だった。

「成功者」著者はこう呼ばれるだろうが、いろいろな困難を乗り越えてこられたのだ。

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by redsunflower | 2014-09-11 11:10 | 読書録 | Trackback | Comments(0)

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