「私は負けない 郵便不正事件はこうして作られた」村木厚子著

50%。10人中5人。何の数字かおわかりだろうか。

作者は、現厚生労働省事務次官。しかし、2009年には郵便不正事件の犯人として無実の罪で逮捕、164日にわたって拘留されてしまった。まったくの無実で起訴されたが、厚生労働省の職員で取り調べを受けた10人のうち、5人が彼女の罪を認めたもの(つまり虚偽の自白をしたもの)が5人、つまり50%だった。(ちなみに、PC遠隔操作事件でも、のちに無実とわかったが自白させられてしまった人の割合は50%だったという。

日本の司法制度では有罪率99%だそうだが、「潔白な人」を虚偽の自白によって有罪と証言させてしまう検察の取り調べに大きな問題があることがこの本は伝える。

アメリカでは被疑者の権利は尊重されていて、弁護士同伴で取り調べをうけることが認められている。しかし、日本では、取り調べ外で弁護士と面会できるだけだそうだ。しかも、日曜日は弁護士との面会できないが、検察の長時間の取り調べは続く。そして、逮捕後の拘留は起訴前で20日。今回の村木氏事件でも直接かかわって本人も自身の罪を認めている厚生労働省の職員も、村木氏が関わったことをでっちあげてでも、自分がこの取り調べから逃れたい、と追い詰められ、虚偽の自白調書にサインをしてしまう。ちなみに、調書とは、自白をまとめたものではなく、検事が書いたストーリーに署名したものだそうだ。起訴前の日本の弁護士の主な仕事は、拘置所に出向き被疑者の心が折れてしまわないように、励ますという非常に限られた形でしか弁護ができないらしい。

検事と言えば、司法試験の合格者で非常に頭のいいエリート、不正などありえないと単純に思っていた私には驚愕の話である。

村木氏は、たまたま運が良くて、有能な弁護士チームがひきうけてくれ、また友人知人からのサポートもあったから、無罪を勝ち取れた、とあるが、一般の人であればどうだったであろう。「執行猶予でもいいから、早く拘留からとかれたい」と思う人もいるだろう。

娘二人の前で、母として、働く女性として何一つやましいことはしていないと胸を張って言える生き方を貫きたかった, とご本人は言っておられる。下の娘さんは逮捕当時高3、起訴後も保釈されず、大阪拘置所に拘留されている母に一日15分会うために、東京在住にもかかわらず、夏休み中はわざわざウイークリーマンションを借りて大阪に住み、母に面会したその足で予備校に通ったという。想像するだけで涙があふれてくる。

本書には、村木氏の罪を偽証した元職員も実名でインタビューに答えている。巻末に載せられた彼の獄中の記録「被疑者ノート」が結局裁判で彼の調書の証拠採択を否としたのだが、彼の検察による追い詰められ方はすさまじい。彼もまた自身の罪は別として、被害者であろう。

取り調べの可視化等、遅々として検察の改善は進んでいないようだが、この問題にもっと関心を持たねばと心から感じさせる本である。
[PR]

by redsunflower | 2014-02-08 21:23 | 読書録 | Trackback | Comments(0)

トラックバックURL : http://sunnily.exblog.jp/tb/21395286
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。