「二人で紡いだ物語」米沢富美子著 朝日出版社
作者は、物理が専門の方には、知らない人はいない日本を代表する物理学者。最近でこそ、女性が研究者であってもそれほどまでに珍しがられることも数少なくなったが、1930年代生まれの作者にとっては、女性が生涯職業を持ち続けることさえあまり一般的ではなかったにちがいない。しかし、作者は、妻、母、そして研究者という3足のわらじをはき、見事にそれぞれの役割を果たしている。今でいう「キャリアウーマン」の先駆けであるが、肩肘を張らず、民間企業に勤める夫と2人で、困難を乗り越えてきた様子には、感服だ。
作者はまた数度にわたる大病に見舞われながら、病室で手術直前まで論文を書いたりして、研究に取り組んできた。それも、自然に当然の如く、進めている様子に、「どこからこのエネルギーが隠されているのか」と驚嘆するばかりだ。 偶然にも本の中に、ジャーナリスト千葉敦子さんと交友があったことが記されている。千葉敦子さんの本は私はほとんど全て読んでいて、彼女のかみそりのような切れ味のある人生には影響を受けながらも、とても真似ができないと感じていたが、一流の研究者である作者の半生がここに記されているようにプライベートも家庭も充実させて成り立つ例があったことを読んで、勇気付けられる。
by redsunflower
| 2006-05-04 22:35
| 読書録
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Comments(4)
なかなか面白そうな本ですね。っていうか、読んだら力が沸いてきそうな感じなので、僕も一冊買って読んでみることにします。いい本の紹介ありがとう!
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by
Lisbeth
at 2006-05-05 19:24
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たまたま訪れたところで、学部時代にお世話になった先生の話。。。
米沢先生からは学部の最終学年で講義を受けましたが、当時も既に多忙を極めている方で講義も2回に1回は休講になるほどでした。でも、受けた講義は面白かったです。私もその時はちゃんと勉強してしっかりAをもらいました。 私も今では宇宙物理の研究者になって、1児の母でもありますが、米沢先生のような存在は本当に大きな励みになります。私は現在ヨーロッパに住んでいて、夫(ヨーロッパ人)も物理の研究者なので、私のキャリアに対する回りの理解度は日本以上に恵まれていると思いますが、それでも先駆的女性物理学者の生き方には大いに励まされます。 先生のその本のことは知らなかったので、Amazonか何かで取り寄せて読んでみたいと思います。
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redsunflower at 2006-05-06 09:08
POPPYさま,Lisbethさま,嬉しいコメントありがとうございます.私は本との出会いは,人との出合いに通じると考えています.なかには,失敗もあるけど,とりあえず読んでみる(話してみる).たまに,ダイアモンドのような本に出会うと人生の友にであったような感じがします.興味を持っていただいてありがとうございます!
「二人で紡いだ物語」、amazonで購入して今日手元に届きました。ついでに米沢先生の「ランダムな世界を極める」もゲット!今夜から早速読みたいと思います。
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